建築構造上「スリット」について

今話題の構造計算書偽装事件で施工の不備も指摘されていました。その中に構造スリットが満足に施工されていないというのがありました。
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2006年2月
     
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2006年02月10日(Fri)
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建築構造上「スリット」について

構造上のスリットとは、次のようなものです。

柱周りにスリットを入れる理由

鉄筋コンクリート造(以下RC造と言います)を構造計算する時、
柱の高さが柱の幅の2倍あるいは、2倍半以下であると、
短柱と言ってより強くしなければならない規定
があります。これは、地震が来たとき、
短柱は、せん断破壊と言って
45度の角度でひびが入りもろい潰れ方がをします。
それに対して長柱(短柱以外の柱)は、
地震が来たとき、曲げ破壊と言って水平にひびが入ります。
曲げ破壊は、粘りのある鉄筋が降伏状態
(フックの法則が成り立たなくなってから、破壊に至るまでの状態)になるので、
地震のエネルギーを吸収して破壊にまで余裕があります。
普通RC造の柱だけでは、短柱になることは、ありません。
腰壁・たれ壁と言われるような壁が柱に付いていると
柱の高さが狭まって短柱になってしまうのです。
この腰壁・たれ壁を柱から隔離するためスリットを入れます。

壁周りにスリットを入れる理由

 RC造の構造計算をする時、
偏心率・剛性率というものを計算しなければならない時があります。
偏心率とは、建物の剛性の中心がどこにあるかという率で、
例えば南側が窓ばかり、北側が壁ばかりの建物ですと、
柱と壁の剛性を比べると壁の方がはるかに剛性がありますので、
剛性の中心は、北側によることになります。
その剛性の偏りを偏心率という数値で表しある程度以上の建物は、
詳しい計算をしなければならないことになっています。
また地震は、弱いところに力が集中しますので、
上の例では、南側の柱を相当太くしなければならなくなります。
剛性率とは、各階の剛性の比です。
1階が駐車場で壁などがなく(剛性が低い)
2階以上が住宅で壁がたくさんある(剛性が高い)と、
剛性率が小さな値になります。ある値以下になると
偏心率と同じように詳しい計算をしなければならないことになっています。
同じように、地震は、弱いところに(1階)に集中しますので1階をより強くしなければなりません。
壁が有っても偏心率を0・剛性率を1にするとため構造スリットを入れます。
この場合の構造スリットは、壁の周りに入れます。
壁の4周に入れれば理想ですが、
それでは、壁が倒れてしまいますので、3周に入れるの普通です。
上からぶら下がるように壁を付ける方法と下からだけ支持する方法があります。
(コンクリートの打設の便から下のスリットが多い)

いずれのスリットの幅については、
安全性を確かめて幅を決めるべきですが、概ね階高の100分の1程度です。

 以上は、正当と認められる方法です。
私もこの方法で設計したこともありますし実際の所神戸の地震に遭ってもつぶれませんでした。
地震に遭った建物のスリット(前者の短柱にならないためのものです。)
についても見て回りましたが、
構造スリットが明らかに縮んだり伸びたりした形跡は、見いだせませんでした。
なお構造スリットが入っていないからと言って問題がある建物とは、なりません。
構造スリットを入れずに設計する方法でも安全性を確かめれば充分で
こちらの方が安全性は、高いと私は、考えています。
要するに構造スリットを入れる方法は、
経済設計するための便法であると思います。