長編小説「昭和」 番外編 清兵衛とおゆかの本願寺参り その3
京都行きの汽車がやってきたので
乗り込みました。
正月からでしょうか
大変すいていました。
ふたりは二人がけの椅子に
並んで座りました。
清兵衛が窓側の席です。
二人は無言のまま
座っていました。
次の次の駅の
尼崎で
二人の前の席に
若い男性と女性が座りました。
二人は珍しい洋装でした。
若い二人は
とりとめもない話
例えば
朝食べた何々は美味しかったとか
隣の何々さんに挨拶したとか
楽しそうに話していました。
清兵衛とゆかは
聞くともなしに聞いていました。
聞き入るゆかを見て
清兵衛には
ゆかがうらやましく思っているように見えたのです。
それで
清兵衛も
ゆかに何か話しかけようと思ったのです。
でも思いつきません。
今まで何も話さずとも
意思が通じていたので
話す必要がなかったのです。
でも
話してみたい
衝動に駆られた
清兵衛は
何を言ったら良いか
考え込んでしまいました。
大阪を過ぎた時に
窓越しに
大阪城が見えたので
「家から見える大阪城より
大きいね」
と言ってみました。
ゆかはやぶから棒の
問いに
少し驚きながら
「そうですよね。
家からは
屋根の上のものまで見えませんね。」
と答えました。
それから風景のことや
朝のご飯の漬物は
美味しかったとか
今日のような風がない日は
宮水運びは楽だろうとか
話しました。
そんなことを話していると
あっという間に
京都に着いてしまいました。