長編小説「昭和」 番外編 清兵衛とおゆかの本願寺参り その2
ゆかは、
お弁当を作ることになりました。
よく使われた重箱に
麦飯のおにぎりと
お漬物を入れていると
千代が来て
「お母さんどちらかにお出かけですか」
と聞きました。
ゆかは
「旦那様が
京都へ一緒に行こうというもので
作ってるんですよ」
と答えました。
千代は
ゆかの声が何か弾んでいるように思いました。
千代が
「それはよろしゅうございます。
麦ご飯ではなく
お米を今炊きますから
しばらくお待ちください。
鶏小屋も見てきます。
卵を取って来ます。」と言うと
ゆかは
「そんなことはしなくても良いです。
麦ご飯とお漬物で充分です。
西本願寺で
戒名をもらってくるだけですから
そんなことしなくても良いですよ。」
千代を止めました。
「でも、
おふたりで
そんな遠くに
出かけるのは初めてではありませんか
それくらい良いのではないですか」
と千代が言うと
「そんな贅沢をすると
旦那様が怒りますよ。」
と答えたので
千代は残念に思いました。
重箱を風呂敷に包んで
ゆかは手に提げました。
ゆかは清兵衛の後ろを付いて
二人は省線の西宮駅に向かいました。
切符売り場で
清兵衛は
二人分の切符を買って
改札の駅員に渡して
切符を切ってもらいました。
ホームに上がって
汽車を待ちました。
その間二人は何も話しませんでした。