長編小説「昭和」 番外編 清兵衛とおゆかの本願寺参り その1
正月特別企画(?)
番外編です。
清兵衛が死ぬ2年前の正月に
戒名をもらうために
女房のゆかと共に
本願寺にお参りしたときのお話です。
日本が好景気に沸いていた
ある年の正月元旦です。
日本の景気を現しているように
初日の出が
大阪湾の向こうの
生駒の山から登ってきました。
いつものように
清兵衛は
浜に出て
朝日を見ていました。
昨日の大晦日の日も
朝の間の仕事に出かけた
清兵衛でしたが
よる年波には
勝てないと実感していました。
気はあっても
体がついてこないようになったのです。
体がついてこないと
また気がついて来ないようになるのです。
その年の初日の出を
いつもとは全く違う目で見ていたのです。
「もうながくはない」と考えていたのです。
そんなことを考えながら
家に帰って
御前様(ご仏壇)の前に座って
朝のお灯明を上げました。
ゆかがお白湯を持って
やって来ました。
やおら清兵衛は
ゆかに
「本願寺に戒名をもらいに
一緒に行こう」
と言ったのです。
ゆかは
「はい」と言いました。
清兵衛の言ったことに
さからったことがなかったですが、
この日の言葉は
びっくりしました。
何に驚いたかと言うと
『一緒に』と言うところです。
いまだかつて
『一緒に』に田んぼや
宮水運び以外行ったことがなかったのです。
京都の本願寺に行くなんて
夢のようです。
と言うわけで
清兵衛とゆかは
紋付を着て
京都へ出発することになります。